塩を作るにはエネルギーがいるのです たばこと塩の博物館

DSC06856  3階の塩に関する展示を見ながら「エコ」について考えてしまいました。
人間が生きるには塩が必要で、地表の70%を占める海にはたっぷり塩が含まれているわけです。幅広くいたるところにある資源なのです。しかし、人間社会がこれを使うためには、海水のままではなく固形物にする必要がありました。ここの展示では、
海から塩をとる方法の歴史が説明されています。
  

 まず、古代から現代にいたるまで、海水から潅水まで濃度を上げる工程と潅水を煮詰めて結晶に仕上げる最終仕上げの工程の2段階に分かれているということを理解しないといけません。飽和食塩水までの工程の最適化と、結晶化するための工程とは最適化の手段が違うと言うことなのでしょう。あたりまえなのかもしれませんが、一見連続して見える現象の場合、その中に段階を区切って構造を作っていくのはクリエイティブな作業です。
  


 この1段階目の工程でどういうエネルギーを使うかが歴史の中で変遷していくさまが興味深いものでした。古代からつい最近まで、日射や風による水の蒸発で濃度を上げてきたのです。エコですね。気候や地形をたくみに利用して効率が徐々に上がっていく仕組みの変遷はけっこうどきどきします。昭和時代半ばの流下式塩田(りゅうかしきえんでん)でも、流下させるためのくみ上げに多少の人工的エネルギーは必要としたのだとおもいますが、必要エネルギーのほとんどは自然界から直接とりいれていたのです。
 次の時代、『イオン交換膜法』 では電気エネルギーで濃度を上げることになり、ついに第1工程も自然から隔離されたことになるのでしょう。それまで、千年単位で続いた工夫の歴史は見ごたえがありました。
  
  
 たばこのフロアは、たばこが文化に与えた影響に焦点を絞っているようでそれはそれでひとつのコンテキストでしょう。ただし、ほかにもたばこをあつかう博物館があるならという条件がつきます。実際は、実質ここにしかないのであるから、たばこの益と害の医学的な説明等もも知りたいと思いますが、たばこをビジネスの対象とする企業の企業博物館ではタブーなのかもしれません。
 歴史を追って展示を見ていくと、早い段階からパイプの長さが異様に長いことが目に付きます。どの国に展開してもできるだけ長くしようとする意志には共通点があるようです。私自身はたばこを吸ったことがないのでその理由が実感としてわかりませんが、温度を下げるか、煙の粒子を吸着させるかといったことなのでしょうか。

 この博物館は、日本たばこ産業 (JT) の企業博物館ですが、なぜか3階の塩の展示には「財団法人塩事業センター」という表示があります。パンフレットをよく読んでみると、どうやら現在はJTは塩事業をしていないようです。専売公社がJTになったときにたばこだけでなく塩事業も移管されたものの、その後、塩の製造販売が自由化され、1996年に財団法人である塩事業センターに継承されたのだそうです。
 館名が「たばこと塩の博物館」で、広く認知されていて幸いでした。JTとしてはいまでは直接関係がない塩部分は不要と判断する可能性もありますが、たばこに興味がない私のような市民にとっては塩の勉強ができる展示が継続される価値は大きいと思いました。

◆博物館心-ミュージアムマインド-  たばこと塩の博物館