自然を見る・観る・視る-複数の視点に気付く体験- 千葉県立中央博物館

DSC01699  縁あって”中央博(千葉県立中央博物館の略)探検隊”という企画を見学させていただけることになりました。主に小学生の団体向けに企画された博物館体験プログラムです。今日は、保育園の園児30名弱と引率の先生方が参加します。


 開始時刻の9:40よりも早く博物館に着いて、事前にひととおり館内を拝見しようと思っていたのですが、初めて来る土地のため、電車やバス等の交通の時間感覚がつかめず、あと15分という時点で最寄の千葉寺駅にようやく到着。早足で博物館に向かうと、前方の交差点を横断する青い帽子をかぶった園児の集団が。もしかしたら今日の参加者はあの子たちかなと思いながら追い越しどうにか10分前に博物館に到着しました。

 見学をご了承いただいた体験交流員の方に挨拶して団体用のエントランスホールで待っていると、やはり先ほどの集団がにぎやかに入館してきました。


 園児たちはホールに荷物と上着をおいたあと最初のプログラム説明をスタッフから聞きます。3つの課題が書かれたワークシートを一人ずつ受け取り、どのように見学を進めていくかを教えてもらいます。説明の最後には「走らない、騒がない、触らない」という3つの掟を大きな声で復唱して、いよいよ展示室へ。

 

DSC01678 この博物館には、自然関連と歴史関係の展示があります。今日の企画で訪れるのは、自然関係の3種類の展示の中のひとつ、 ”房総の生物”の展示室です。10人ほどずつ3班に分かれて、かわりばんこに3つの課題をこなしていきます。ワークシートに書かれた課題をスタッフが説明したあと自主行動になります。班ごとのマネジメントは保育園の先生が行い園児たちを課題に集中させます。
 事前の想像よりも、園児たちはお行儀がよく集中力があります。しかし型にはめられているわけでもありません。”模様を探そう”といった課題では、蝶や魚の展示の中からお題の模様を見つけてスケッチをし、ひととおりかけたら「本部」にもどってボランティアの先生に報告し指導してもらいます。皆、スケッチに熱中して細かな模様を一所懸命に見て写しています。先生方は、時間内に「処理」することにこだわらず、進捗の遅い子・納得いくまで細かな模様を書き取ろうとする子に寄り添って一緒に観察をします。園児たちは、スケッチするためには自然と実物に顔を近づけるので自然とかがんだ姿勢になります。ここで、それぞれの展示物の高さがけっこう低いことに気がつきました。園児たちがしゃがんで見つめられる高さです。設計時に意図されているのかもしれません。遠くのものを見上げ観察するのと目を凝らして観察するのとでは見え方が違います。この博物館は大きな自然公園の中にあり、ここで見たものは自然状態のまま見ることもできますが、自然のままでは特定の対象を探して間近に観察するのは簡単ではありません。自然の公園と博物館の組み合わせで複数の視点が提供されているのだと感じました。

 

 プログラムの途中で、たまたま、他のの保育園児グループも同じ展示室にやってきました。こちらの園児たちは緑の帽子をかぶっています。彼らも虫や鳥の標本に関心を示すところは同じです。ただ、青い帽子と緑の帽子を見比べていると、一つの資料の前にいる時間・姿勢・おしゃべりの量が全く違います。ものをしっかり見るのは意識しないといけません。大人になっても簡単にはできません。小さいころに目的を持ってしっかり見る体験をすることは、彼らの将来にどうつながるでしょうか。課題を与えられたことで集中する体験の次には自分で課題を作れるようになるのかもしれません。

 

DSC01698 企画終了後、1時間ほどかけて全館の展示をめぐってきました。大まかな展示構成は、他県の県立博物館等でも見たことがあるようなオーソドックスなものです。しかし、各所に独創的な展示方法があります。
 人気があるというキノコの比較展示では、「毒キノコと食べられるキノコ」のマークがついています。一見おどろおどろしいキノコでも食べられるものもあれば逆のものもあります。自然の生物を客観的に見るだけでなく「食べる」という日常的な視点で見ることも複数の視点の提供を意識しているのでしょうか。

DSC01695 菌類の展示では、目に見えるくらいの大きさに拡大した模型が飾られています。平面的な写真展示や実物を見ることを重視した顕微鏡観察等では、微小な生物が平面的に見えます。3次元拡大模型を見ていると、もし自分がミクロに縮小されてしまったら、このような菌類の森の中を歩くことになるのかなあ、と自然とSF的な感覚が芽生えます。これも「違った視点」でしょう。

 

◆博物館心-ミュージアムマインド- 千葉県立中央博物館