絶頂期を超えた後の人生ににじみ出てくるもの   長崎まちなか龍馬館(長崎市)

Ryoma02 この年、NHK大河ドラマ「龍馬伝」のポスターやのぼりで町は龍馬一色でした。訪問直後に横浜でインタビューした博物館ブロガーは高知出身の方で、長崎と高知の両方を見て長崎の盛り上がりに驚いたそうです。確かに町を回っているうちに、ここが龍馬の故郷だったのではないかと思えてきます。高知は身体の、長崎は精神の起点なのかもしれません。市中を東南から西北に斜めに貫く「長崎龍馬の道」の中程は商店街になっていますが、ここはその中間地点に期間限定で開設された施設です。

 

 

亀山社中記念館は面積も限られており、”点”としての亀山社中の説明に限定せざるをえないのと比べて、ここは観光案内所のような目的も持っているせいか長崎全体の立体感を感じ取ることができます。龍馬だけでなく、幕末に活躍した勝海舟・桂小五郎・後藤象二郎・岩崎弥太郎、そしてこの道の南端に邸宅を構えていたグラバーが絡み合った歴史が2kmほどの道程に圧縮されています。

 

Ryoma00 ゆかりの品々の展示を使って描かれたグラバーの数奇な人生の後半、明治になってグラバー商会が倒産した後の足跡に目が留まりました。幕末・維新時の師弟的関係から明治期の逆転の主従関係に至るグラバーと岩崎弥之助の関係を何枚かの写真に見て取ることができます。どんな偉人でも、歴史に残るのは絶頂期に縮退してしまいそこに至った成長の過程が添え物になりますが、その後の残りの人生の生き方にこそ生の姿が見えてくるように思います。

暗殺されなかったら、その後龍馬はどんな人生を歩んだのでしょうか。歴史のタラレバを語ればきりがありませんし、その時期がないからこそ伝説になったのかもしれませんが、そこまで生き切ったもう一つの道にも期待してしまいます。

(2010/9/6 鑑賞、2011/7/28 執筆)
 
博物館心ミュージアムマインド「長崎まちなか龍馬館」へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA