人生を2時間におさめる場合の、映画と博物館  渋沢史料館(東京・北区)

Shibusawa01  例えば渋沢栄一と人生前半の時代を共有した4歳違いの坂本竜馬の場合、30年余りの人生を短距離走のようなストーリーに仕立てて何度も映画化・ドラマ化されています。渋沢栄一の場合は、90年間のマラソンのような人生で驚くほどたくさんの領域で尽力しているために、かえって劇的な事件やストーリーに優先順位をつけるのは簡単ではありません。展示や解説を見ていて、ただ本当にいろいろなことをされた方なのだということに圧倒されるばかりでした。こういうケースでは博物館・史料館のような表現方法があっているのかもしれません。ちなみに、ある博物館の見学時間の調査結果では平均時間は2時間ほどでした。映画も博物館も時間はだいたい同じということは、人が集中できる時間がこのくらいということなのかもしれません。

 
 偉人と呼ばれる人たちの中で、経済人の足跡については、映画にはならずに史料館になっている事例は他にもいくつか思いつきます。個々の事件や業績の点描がなされ、一応の公式ストーリーは提示されるとしても、見学者にもいくらでも再構成のチャンスがあります。そう考えてみると、実は、「ひとことでいえば・・・」と単純化できない人生のほうが多いのではないかということに気づきます。強烈な印象を与えるヒーローは希少価値だからこそドラマとして共感を呼ぶのでしょうが、それを支える根のような業績の積み重ねは努力しないと見えてきません。そして、多くの人は一言ではいえない人生を歩んでいますよね。

(2011/2/24 見学、2011/6/30 執筆)

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