蜂の巣を見て”木材から紙を作る”ことを思いつく必然性  紙の博物館(東京・北区)

Paper01  草や樹皮から繊維をとって紙をこしらえる、という紀元前の中国でのイノベーション以来、長らく紙は手間暇かけて作る貴重品だったわけです。和紙の材料のコウゾやミツマタも樹皮です。次のイノベーションは、木材を粉砕して植物繊維を取り出すという発想の出現でした。文字や絵を複製する印刷の手法の発展によって、大量印刷・配布という潜在的なニーズが膨らんでいたことと関係しているのでしょう。

 
 透明カプセルに封入された大きな蜂の巣の展示の下には、「1719年フランスのレオミュールは、すずめばちが木材の繊維を集めて巣を作るのを見て、木材からパルプを作ることを思いつきました。」という解説がぶら下がっていました。

 
 この発見は”木”にとっては大災難で、せっかく何十年もかけて構築した固い構造が、粉砕機(下の写真を参照)にいれられて繊維がバラバラになるまでシャッフルされるようになったわけです。それまで、数千年の間、数億人(?)が蜂の巣を見ていてもそれが紙の大量生産のヒントだとは気付かなかったのですから、
 
 「発見」=「刺激との出会い」×「目的意識の醸成」
 
ということなのだと思います。
 
Paper02  便利な世の中になって、大量の情報と出会うことが誰にでも可能になりましたが、それだけでは発見は生まれないということでしょうか。何度も”ペーパーレスの時代が到来した”といわれたのにいまだに私たちのまわりは紙だらけです。明確な目的意識はそれなりにあるはずですから、あとは誰かが何かの刺激に出会ったときに決定的なイノベーションが生まれるのでしょう。
 
(2011/2/24 見学、2011/6/28 執筆)
 
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