あと10億年の命です。  特別展『空と宇宙展 -飛べ!100年の夢―』国立科学博物館(東京・上野)

DSC07240  「あと10か月の命です」と宣告されれば深刻なのですが、「あと10億年の命です」だと相当インパクトが減衰します。太陽の進化過程を考えると、10億年後には太陽の活動の変化で地球上の全生物が絶滅することは実は確定しているようですが、実感のレンジをはずれてしまって何も感じません。それまでに人類、ないしはその後を次ぐ生物(とは限らないかもしれませんが・・)は、惑星表面という生存領域の制約を超えることができるでしょうか。

  
 そうなってしまえば月だって同じ運命ですが、それまでの間の私たちの進化のステップを踏む場としてはけっこう有望なのかもしれません。人だかりがしている宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」の実物大モデルから離れて、会場の出口付近にぽつんと展示されている「ルナリング」(清水建設協力)の造形に惹かれながら瞬間的にそんなことを考えていました。

  

 清水建設が計画している(?)月面太陽発電システムの模型です。月の赤道上に最大幅400kmで指輪状に太陽電池を敷き詰めるというプランです。月の直径は地球の4分の1ほどですから、表面積は16分の1。しかし大気がないので発電効率がかなりよく、重力が小さいことで建設費が抑えられることも考えると、月のポテンシャルは地球並みかもしれません。ここで得たエネルギーを消費地にどう送るかも問題ですが、消費地をここにもってくる時代になったら、空気や水の確保のためのエネルギーを使っても月面のほうが地球よりも効率がよくなるかもしれません。そんな時代はまだまだ先のことですが、はやぶさもその何百、何千歩かの歴史の1歩なのかもしれません。

  

1  特別展『空と宇宙展 -飛べ!100年の夢―』の会場には、空と宇宙の展示がありましたが、どうもこの2空間はかなり違う印象です。イメージカラーとデザインモチーフを比較すると、空は青と流線型、宇宙は黒と球体ですよね。

 

 映画『ライトスタッフ』では、飛行機乗りと宇宙飛行士の微妙な関係が描かれました。大気圏と宇宙空間の境界を越える苦しみが、いずれ太陽系と系外との境界でも繰り返されるのでしょう。その時代に立ち会うことができないまでも想像は膨らませたいと思います。

  

(2011/2/4 見学、2011/6/16 執筆)

  

特別展『空と宇宙展 -飛べ!100年の夢―』

月太陽発電 LUNA RING

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