50歳からの独創 「アンリ・ルソー パリの空の下で」ポーラ美術館(神奈川・箱根町)

Pola01  50は天命を知る齢。戦国時代なら人生の締めを知ったのでしょうが、今では折り返し点ですから、知るべき天命も違って当然です。多くの人が1世紀近く生きる時代なのです。数年前このマイルストンが見えてきて、再度ぎしぎしとゼンマイを巻き上げようと思った時に、ある博物館でお手本として目に入ってきたのは、50で隠居し第2の人生で日本全国測量&地図作成という偉業を成し遂げた伊能忠敬の人生でした。ルソーも、50近くで税関の職員を退職してプロの画家として絵を描き始めました。若い野心に比べかえって雑念が削ぎ落とされて純粋な意欲がそのまま気負いなく存在できるのかもしれません。

 

 

 
Pola02  展示の後半には、ルソーに才能を見出し、晩年に開かれた「ルソーを讃える夜会」に集ったピカソ等のモンマルトルの前衛画家たちの作品が並びます。これらの作品に感じるルソーとの共通点によって、ルソー前とルソーとの差異が際立ってきます。自分自身の眼に見えるもの、というピュアな精神は多くの次の世代の画家に影響を与えたのでしょう。
 
 本展覧会については、BS日テレ「ぶらぶら美術・博物館」#19 箱根 ポーラ美術館~抱腹絶倒!?天然画家・ルソーの名画を満喫!~ で予習していったので、説明文の字を読むより作品そのものの絵に集中できました。当日は急に雪になり、美術館に向かう途中で次々と車が立ち往生して通行がマヒ状態。しかし、そのため人気スポットのこの美術館に到達する人の波が大幅に遅れたようで、人影まばらな展示室でゆっくりと鑑賞できました。そのあと一面の雪景色に望む付設のレストランでランチをいただいたあと、帰途に。
 
(2011/3/7 鑑賞、2011/7/4 執筆)
 
博物館心ミュージアムマインド「ポーラ美術館」へ

 
 木や草花の一枚一枚の葉が丹念に描かれている一方、標準レンズで撮影した写真とは全体としては整合性のない不思議な遠近感。身近な植物園でのスケッチを基に想像で描き上げた熱帯のジャングルの幻想的な描写。忠敬は足を使って全国を巡りましたが、ルソーはパリにいながら自分の頭の広い空間の中に神出鬼没で出現して回ったのではないかと思います。
  
展覧会名 「アンリ・ルソー パリの空の下で ルソーとその仲間たち」

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