唐招提寺の平成の大修理を思い出しました  西南学院大学博物館(福岡)

DSC03866a  1921年完成というわりには煉瓦の傷みが目立たず外壁をはう蔦も若々しく見えるなあ、と思いながら館内に入って見て回ると、最後に自然と2階の講堂をぐるりと見下ろす3階吹き抜けフロアに達します。

 ここのギャラリーに2004年8月から2005年7月にかけて行われた復元改修工事の説明がありました。建物を覆う足場が組まれ、部材を丁寧にはがしていって補強と修復を重ねながら創設当時の姿に近づけるように復元されたのです。頑丈な煉瓦造り、しかも3階建て、という基本条件に似合わず、開口部が多いことが特徴で、数多くのガラス窓が外の光を受け入れて昼間なら照明不要の明るさです。
  
 

 素材・構造はまったく違いますが、その風景は奈良の唐招提寺で行われた平成の大修理の風景と重なりました。建物の由来を考えてみると、日本に仏教を伝えるというミッションに人生を捧げた鑑真和尚と、同じくキリスト教の教えを伝えるミッションを持って太平洋を渡り西南学院を創設した宣教師ドージャーやこの建物を設計したヴォーリズとの間には、何かの相似を感じないわけにはいきません。
 
DSC03865a  ミッションというコトが、モノとして昇華した建物だからでしょうか。百年、千年たったときその存続のために協力するために大勢の人とお金が集まったのでしょう。歴史的建造物そのものの価値に、精神が付随しているのかもしれません。

 周囲の花壇には、聖書に登場する植物が集められて育てられています。大地の恵みに対する感謝の念にも囲まれていました。

(2011/6/5 訪問、2011/6/10 執筆)

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