培養で作られた「宇宙」 明治神宮 御苑(東京・渋谷)

3b  花菖蒲の品種のひとつで、「宇宙」と書いて”おおぞら”と読みます。 

 


 江戸系の花菖蒲約150種、1500株の花菖蒲が6月の今、明治神宮でも開花のピークを迎えています。多様な色・形の株ごとに、木の名札が添えられており、最初に目に入ったのが「宇宙」でした。どういうことだろうと思って、もう一度あたりを見渡すと、他は日本酒の銘柄のような名札です。「宇宙」は、江戸後期の花菖蒲中興の祖で旗本だった松平定朝(菖翁)が作りだした品種(菖翁花)の中でも名花といわれる絶品だと説明されていました。かなり思い入れのある名前のようです。 

 

4 どうしてこんなんにたくさんの品種があるのだろうと思って、帰宅してネットで調べると、人間が栽培品種として改良を加えて新しい品種を培養して作ったということです。そういえば、薄手のハンカチを染めて真ん中を絞ってから開いたような花の風情は、次々と新種が作られる蘭(らん)と似ていると思いましたが、花菖蒲は単子葉植物綱 ユリ目 アヤメ科 、ランは単子葉植物綱 ラン目 ラン科 とあるので近縁ではないようです。

  

 
 御苑の中に都会では珍しい湧水の井戸があります。「清正井(きよまさのいど)」から湧き出た水が、段々の菖蒲畑をくだって、南池に注いでいます。ここの花菖蒲は、明治天皇が皇太后のためにお植えになったのははじまりだそうです。雑木林に囲まれた菖蒲畑という都心では贅沢な風景は、ほかに東大の小石川植物園で見ることができます。

(2011.6.15 見学、執筆)

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