日本刀の鍛錬、面構えの鍛錬 大倉集古館(東京・港区)

Okura2  日本刀の新作展「伝承の技と創造の美 第2回新作日本刀 刀職技術展覧会」が開催されていました。

 おそらく銃刀法の関係で今では”一家に一本”はないはずなので、歴史的な遺物しかないのだと思い込んでいたころ、今でも全国に刀匠がいるそうです。賞をとったお二人の略歴を見ると、一方は美術の学校で勉強した後、もう一方は脱サラした後に師匠に弟子入りして修行した30代の若い人でした。そういう産業が残っていることには驚いたものの、個々の作品の味わいを楽しめるだけの知識を持ちあわせていないのでさらっと見学するだけのつもりでしたが、日本刀の製造プロセスの説明パネルがたいへん勉強になりました。

  

 鋼を熱して叩いて伸ばして二つ折りにしてまた叩く「折り返し鍛錬」を十数回繰り返したもの2枚を、一方をU字型にした間にもう一方を挟みいれてようやく基本的な骨格が完成するということです。仮に繰り返しの数を12回とすると、
 2の12乗×3=12288
1万層が刀身に巻き込まれていることは、1層の厚さは1μmくらいということになります。「刃のついた鉄棒」ではなくてハイテク製品ですね。繰り返し鍛える量によって次元の違う質の領域に到達するということです。歯の部分の削った断面の怪しく微妙な色合いもこの内部構造を反映しているのかもしれません。

 

Okura0  さて、この美術館の創設者は、新潟県新発田市出身で幕末から明治の時代に一大財閥を作り上げた大倉喜八郎氏。立ち上げにかかわった組織で今に残るものは、企業は大成建設・あいおいニッセイ同和損害保険・サッポロビール等多数、学校では東京経済大学があります。ちなみに、本美術館が建っているホテルオークラは跡を継いだご子息・喜七郎氏が設立されたものです。

  

 

Okura1  館の前庭には、見事な面構えをした喜八郎氏の銅像があります。履物を脱いだ片方の足をベンチの上で組んでいるというなかなかふてぶてしい姿勢です。エヘンという咳ばらいが聞こえてきそうな存在感があります。自力でビジネスを興し拡げ財をなした自負でしょうか。自分の銅像をしっかり後世に残す方法としても博物館を遺すというのは悪い方法ではないようです。

 
(2011/7/10 見学、2011/7/12 執筆)
 
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