機雷->ウミユリ->ユリ、という流れで揺られてきました 鹿沢ゆり園(群馬・嬬恋村)

Yuri00 広島・呉市の「てつのくじら館」で機雷がウミユリに見えたせいで、普段なら通りすぎてしまうであろう観光用のゆり園に足が止まりました。なにしろ、嬬恋村のキャベツ畑を車で進むと、道際には延々と徹底してゆり園の広告が並んでいるのです。

スキー場のゲレンデに植えられたゆりの上を、2人用リフトに揺られながらゆっくりと登っていくという趣向です。海底のウミユリを深海艇で眺めるとこんな感じなのかもと相当想像力を拡張させることも不可能とは言い切れません。白、黄色、オレンジ色、赤みがかった色と様々な色のユリがあるが特に品種説明のプレートなどは思い切り一切ありません。

 

Yuri01 アカデミックな植物園とは風情が違い、ただゆったりと夏の高原の花畑を楽しもうというコンセプトです。家族連れ・カップルなど、多くのお客さんが訪れているのは、半径数kmにおける広告戦略のなせる業としか考えられませんが、来場者が散策中に醸し出すほっこりとした雰囲気は、このシンプルな構成がけっこう季節柄いい味を出すからかもしれません。

ある単語にとそれにウミという形容詞句をつけた単語のセットがあります。例えば、ヘビとウミヘビ、ネコとウミネコ、坊主と海坊主、そして、ユリとウミユリ・・・。

存在場所のバリエーションを表している場合もありますが、”ユリ”の場合、両者には直接の関係はありません。しかも先にありきはウミユリです。古世代に生まれ今でも子孫を残し続ける原初の多細胞生物であり、どちらかといえば動物の祖先です。一方、顕花植物のユリの祖先が生まれたのは古生代も後半のことです。別々の系統で進化しながら、似た形が生まれるのはちょっと不思議です。

ユリの花は生殖器官で、ウミユリの”花”は口かつ胃袋ということになるので機能は全く違います。しかし、その形の類似性から、時間の順序を逆転させて命名されたことになります。名付ける主体者である人間の発生時期とその知見の深まりと記録方法の進展のフィルターによって、現実とは違う認識で世の中は記述されるのです。

客観的な命名というのはフィクションです。主観のズレが発見と想像を生み出すのです。

(2011/8/15 見学、2011/8/28 執筆)