昭和30年代に生まれた私にとって、そこにあるのは化石化した過去ではなくて、生き生きとした生活の息吹でした。
はじめて家に東芝マークの電気釜が届いたときの、最初の炊飯を見つめる母の困ったような表情が思い浮かびます。おそらく正確な記憶などではなく、その後の歴史の積み重ねが作り出した幻影でしょうが。
電話機がプッシュホンに切り替わったときに、ちょっと先に近未来に来てしまったような気負いがありました。展示説明を読んで、昭和44年頃のことだとわかりました。見学に来る小学生は、ダイヤル電話の番号のまわし方がわからず、数字を押すだけの子もいるそうです。受話器をあげてからダイヤルするという手順もあやふやになってきたそうです。
”モノ”から”コト”へ、というお話は確かにそうなのだろうと思うものの、かつて一つ一つの”モノ”に込めた思いには実は”コト”がはさまっていたのではないかと思います。
北名古屋市という中性的な、あまり妄想を掻き立てない名称に合併された師勝町というこの地の名も、しっかりと誇らしい歴史として残ってほしいものです。
写真の左側は現在開催中の企画のパンフレット、右側は百円で購入したクリアフォルダーです。
http://www.city.kitanagoya.lg.jp/rekimin/index.php