一度できたヒトのネットワーク構造はけっこう丈夫だったりします(大阪市立自然史博物館)

http://www.mus-nh.city.osaka.jp/index.html

ある企画のお願いで学芸員を訪ねて打ち合わせ。

しかし、その途中で、キノコについての問い合わせが次々と電話で入ります。お仕事ですからそちらが最優先です。

”オオシロカラカサタケの毒性確認や、識別のための現物資料を送るときにはビニール袋ではなく紙に包んでクール宅急便で送って欲しい件”

とか、

”ササクレヒトヨタケに似たキノコの中にはアルコールと一緒に食べると悪酔いしてしまうものがある件”

とかを、電話口で得た情報で的確に切り分けて案内されます。

その電話のやりとりをお聞きしていると芸事のような熟練・洗練の世界が想起されます。

これが特定個人のことではなく、専門家である学芸員全員が交替で毎日受付の隣に待機しているとお聞きして驚きました。主に年配のボランティアスタッフが待機している施設は珍しくありませんが、学芸員にいつでも話しかけられるというのは子どもにとってはうれしい環境だと思いました。

 

閉館30分前に打ち合わせがようやくひと段落つき、駆け足で館内を案内していただきました。

 

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第2展示室では肉食恐竜が直立していました。私の子供の頃の定説です。足元に、その後の研究によって、体が水平に近かったことが説明されています。未知の世界の解明の過程、思い込みの罠、等を一言説明できれば生きてくる気もします。

部屋全体がニューヨークのアメリカ自然博物館に似ていると思ったら、まさにその展示のレプリカを世界に展開した第一世代だということでした。

これほど頑丈な展示だと修正が難しいのでしょう。制約の中でもがくスタッフの試行錯誤を見とれます。

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ひととおり一般向け展示をご案内いただいたあとは、いわゆる”関係者外立入禁止”のバックヤードへ。廊下には、学芸員の研究成果を学会などで発表したポスターがびっちり貼りこまれていました。

博物館は教育機関ですが、研究も必要です。そして十分なリソースがあるわけではありません。そこで諦めるか、追求を続けるのか、館の歴史で大きな違いが生まれるのだろうと思いました。この組織文化のしなやかな丈夫さは、構成するスタッフの意欲が歴史的に維持されてきた賜物だということです。

 

p.s.

地元の子は3、4年生頃にクラスで見学に来る機会があるそうです。実物の楽しさを感じてリピートするとのことなので問題ありません。 わたしのようなビジターは、ホームページや市内の観光を見て判断するので、この博物館が一般的なものと違うことになかなか気づけないな、と本日理解しました。