
完成した展示の前の順路を通り過ぎる観光客の多くの所要時間はせいぜい10分程度です。
1周目は同じようにひととおりを確認だけしてから、2周目は展示設計者の意思を想像しながらたどります。
博物館の展示として、誰の声を、どの出来事を、取り上げるのか。
最近は、博物館と図書館が複合施設内で隣接しているケースが多いようですがここもそうでした。
標準化に価値である図書館・司書のかたちと、オリジナルの資料を学芸員の考えに従って展示する博物館の対比が際立っていました。
前半の「恩納のくらし」(民俗ゾーン)では展示の解説の中に、具体的な体験談が地元の言葉で加えられていました。
何をしているのかだけでなく、どういう背景で、なぜ、どんな気持ちで、どんな苦労や楽しみがあったのか、が浮かび上がってきます。
その一言を聞き出し整理し展示と対比させるまでの学芸員さんや他の協力者の丹念な作業の積み重ねを想像せずにはいられませんでした。




後半の「恩納のみち」(歴史・考古ゾーン)でも、展示の特徴に気付きます。
たいていの地域博物館の歴史展示では、太古から時間の順を追って最後が昭和あたりで終了というパターンがです。しかも、「時代」区分ごとにコーナーが配分されているのが「目立ちます。
この館では、まず明治以前の個人単位の歴史の描写からスタートします。
そして、戦争、その後へ。

一転、中世、琉球のグスクの時代へ。

さらに、縄文・弥生の時代へ。
今とは違う地域間ネットワーク。一人一人から見えた世界の風景を想像しながらの見学です。

歴史展示がまるめた時間順ではなく、身近にズームインしてから太古にズームアウトするという流れです。
時間があれば、設計された学芸員に一言でいいからお話を伺おうと思って入り口にある事務室を除きましたが残念ながら席を立たれているようでした。アンケート用紙があれば書き残そうと思ったのですがそれもなく、残念ながら時間切れで博物館を後にしました。
恩名村博物館
沖縄県国頭郡恩納村字仲泊1656番地8
2001年開館 入館料無料
記事抜粋「観光×図書館! 利用者が増え続ける恩納村文化情報センター」
