時間軸が封入された3次元表現:巻物 『大神社展』その3

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全開になった巻物の展示は、最近の傾向でしょうか。以前は限られた場合だけだったような気がします。

なにしろ、それだけ連続の大きなスペースが必要になりますから条件の整ったミュージアムでなければなりません。

スペースが限られていたり、展示作品が多い場合は、透明の重しを載せ肩幅程度広げられた状態で展示されています。そして期間によって少しずつ広げる部分を変えるという場合もあります。

そういう展示では、全体像を俯瞰したいという誘惑が生まれてきます。それこそがまさに巻物が生み出す情動なのだろうと思います。

「左手で開いて、右手で巻き取る」を繰り返して、時間の経過を追体験する。全体を俯瞰してしまうと同じキャラクターが何度も現れて不自然に感じますが、肩幅で巻き取りながら見るときにはまったく問題はありません。

全部見たいがもともとの表現も味わいたい、となると動きのない展示では再現ができません。最近、根津美術館の学芸員の方にご自身がかつて取り組まれたトライアル事例を紹介してていただきました。ICTを使う意味のある表現だと思います。

 

※写真撮影は、館の許可を得て行っています。

PCにせよ、スマホやタブレットにせよ、おおむねある範囲に縦横の比率が収まる長方形の平面スクリーンに画像を表示します。

そういう標準化が進むことで便利になった一方、工夫せずに標準化の恩恵だけうけていると、巻物や屏風といった「2+次元表現形式」まで、標準的な表現形式に縮退してデジタル化されてしまいます。そのことを踏まえていかないといけないなと思います。