3月11日の大震災発生時に私がいたのはここのすぐ前の路上でした。そのひと月ほど前には、入り口がボードで閉じられていて「3月20日リニュアルオープン」と掲示されていることに気付いていました。リニュアルしたらどう展示が変わったのか確認しに行こうと思っていたのですが、本日のニュースで閉鎖・売却の方針が伝えられたので、もはや二度と内部を見ることはできなくなってしまいました。福島第1原発事故の賠償資金確保のためには仕方のないことなのでしょう。
以前は、2フロアぶちぬきのかなり大きな原子炉の模型があり、ボタンで制御棒を動かして3次元で理解することができました。また燃料棒やその中に充てんされている核燃料のペレットの実物大模型もあったので今回の事故後のニュースを聞いていて具体的なイメージを浮かべるには役立ちました。
原子力発電の是非・賛否とは別に、現実に動いているものがどういう仕組みなのかを本当はできるだけ中立的に理解しておくことは大切ではないかと思います。ここは、東京電力の宣伝施設だということだけでも「中立的」とはみなされないのは当たり前だと思いますし、実際にいろいろな説明を読んでいても、危険性に関する可能性などはかなり伏されているような印象はありました。ちょうど25周年を迎えたところで、でんこちゃんと記念撮影もできるようになっていました。
過去の経緯から、「中立的」が何を意味するのか自体、意見を異にする人の間で合意形成するのは難しいのかもしれませんが、次の世代の目に全く触れないように隠してしまうことによって新たなリスクが生まれていくようにも思います。
先日、他の科学館のスタッフの方から「震災後ようやく再開したところ、以前とは観客が全く違っていることに驚かされている」というお話を聞きました。エネルギー問題の展示などで目立つようですが、より自らに直結する課題として関心が高くなっているようです。蓋をして解決、ということにならないように何かしら応援したいですね。
(2009/12/1 訪問、2011/6/14 執筆)
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