ここにしかない時空間でした 旧・広島県物産陳列館=原爆ドーム(広島市)

Dome1 

路面電車を降りて横断歩道のむこうにドームの輪郭が見えたとき、胸騒ぎがしました。感覚が時間を遡っているのかもしれません。写真や映像ではなく、実際にその場に立ってみたときの心持ちは予想はしていたものでした。西に向かう電車進行方向には、原爆の投下目標だったT字型の相生橋、そこから90度南に視線を動かすと生い茂る緑の先に見間違えようのない骨格が歯を食いしばって直立不動を維持しています。崩れそうになる気持ちを使命感でかろうじて抑えてその姿を晒し続ける人間の投影のようでした。

訪れたのは66年目の8月6日の3日前でした。陽射しはじりじりと強いのに汗はかかず、永遠に続くような蝉の声の中で時間が止まっていました。見学者の動きはスローモーションのように遅く、話はしているのに声が聞こえてきません。

ここは、もっと早く来なければいけない場だったと思います。準備に半世紀もかかってしまいました。
 
(2011/8/3 見学、2011/8/6 執筆)
 
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