制約と創造の連鎖・・ 「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 パナソニック汐留ミュージアム

http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/140726/

ポスター・チラシに掲載された「ガラスの家」の写真。全面にガラスブロックが施されたモダンな建築です。

この家に招かれて案内されるがごとく、いくつかの射影を見比べて部屋の中を仮想探索していきます。

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まず、ガラスの家の模型をぐるりと見て、左右と上下4面の外形的な制約を理解。自由なのは前と後ろの2面だけです。

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各フロアの図面を見て、内部構造の理解を積み上げ、

そのあとに、室内各所を撮影した映像(未撮影)と見比べて、ようやくどういう立体構造なのか腹におちました。

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余裕ができてから映像の1枚1枚の細部にようやく目が届き、展示されている家具類のいくつかが実際の部屋の中でどのように配置されているのかもわかってきます。

そのあと、もしここに住んだなら表玄関から入ってどんな動線で生活することになるのかイメージします。とても自由な空間です。

パズルを解くような3次元鑑賞体験でした。

施主が相続した3階建てのアパルトメンの3階部分の借家人が立ち退かず、しかたなく下部2階をくりぬいて3層に作り直すという複雑な条件がありました。

この制約が、建築家の想像力を刺激したのかもしれません。構造全体を支える鉄骨を部屋の中に屹立させることで、外壁をすっきり大画面ガラスに仕上げています。100年前といわず、今見ても”モダン”です。

一瞬、障子戸のようにも感じるのは、ガラスが曇っているからでしょう。不透明で見えないからこその湧き上がる住人の想像力のふくらみ。建築家からクライアントへ、あらたな制約のプレゼントです。

p.s.

翌日、「ユダヤ人問題」の勉強会に参加し、特にヨーロッパ社会におけるその歴史の中の制約と創造の連鎖の可能性にも気が付きました。シャローも、彼に建築を注文した富裕層も、そういった背景の中の連鎖に連なっているのかもしれないと気づきました。

※写真は特別の許可を得て撮影しています。(投影映像は撮影不可)