違いを作る部品と機能 セイコーミュージアム・墨田区

高さ190cmもある1500年頃のヨーロッパの鉄枠棟時計。すでに写真中央にのこぎりの歯のような冠型脱進機の機構が見て取れます。

内部構造と動作がわかるように展示された時計を次々と見ていると、子どものころにおもちゃの時計を分解しては組み立てを数十回繰り返した好奇心を思い出します。おのずと、見学の関心事が精細な部品に向きました。

調速脱進機

時計は”時を刻む”もの。等時性を備えた振り子やてんぷ、アンクル、がんぎ車の組合せが、動力源によって生まれた回転のステップを整えます。耳の三半規管を思わせるあやうい造形です。

国産初の腕時計。懐中時計からさらに小型化したコイン大のケースの中にも詰まっています。

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肉眼ではこまかな凹凸が定かではない微細な部品群。右下の3つが脱進機の部品です。

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服部時計店の「八日巻掛時計」の内部の動きを動画でご覧ください。

■自動巻機構「マジックレバー」

あまり聞くことがなくなった機械式の「自動巻き」。ランダムな動きをぜんまいを巻く回転に変換するアイデアは、何かしら他でも使える発想なのではないかと考えさせられます。

■日時計のグノモン(投影棒)

1700年代清朝の赤道型(コマ型)日時計。紀元前4000年頃エジプトで発明された日時計は数千年使われていることになります。

現代の時計の針はなぜ右回りなのか。機械式の時計が発明されたのが北半球だったのが理由ではないかと推測されているそうです。

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■機械式時計を日常の不定時法に合わせる仕組み

江戸時代の公式の時間は不定時法。夜明けと日暮れで昼夜を分けるので季節・昼夜によって、”一刻”の絶対時間は変わります。新しく登場した絶対時間志向の機械式時計が刻む時間と日常の時間とを按排するのが、二挺天符目覚付袴腰櫓時計。昼用・夜用の二つのテンプが明け六(むつ)、暮れ六(むつ)時に自動で切り替わる機構を備えられています。

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このミュージアムで紹介されている時計は、機械式のものに焦点が当てられています。そして、誤差を少なくするための技術的な進歩の歴史が順を追ってわかるようになっています。

一方、日時計、香時計、砂時計、水(油)時計などの別の発想の時計は限られていました。

そういったものは松本市の時計博物館で見ることができます。松本では、さまざまな表示の工夫や装飾についても楽しむことができます。


セイコーミュージアム

1881年(明治14)、服部金太郎は21歳で「服部時計店」を開業。

2階でエレベータの扉が開くと目に飛び込んでくる彼の言葉は「急ぐな、休むな(Don’t hurry, don’t stop)」、「常に一歩先に(Always One Step Ahead of the Rest)」。時計そのものを表してもいます。

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