シルクロードを遡っていった蒐集の長い旅 松岡美術館(東京・港区)

 説明によれば、創立者・松岡清次郎氏は20代から始めた美術品蒐集を始め80歳になって美術館として一般公開したということです。自らオークションにでかけ、自らの鑑識眼にかなうものだけを買い集め、一度買ったものは一点も手離したことがないともあります。寄託・寄贈も受けず、他の館からも借り入れはしないというポリシーは、私立博物館は個人の審美眼なり鑑識眼を蒐集した美術品を通して表現する場所であるべきとの氏の信念に基づいています。

 2階では、内庭の日本庭園側から差し込む柔らかい光に向かって並ぶガンダーラの仏像彫刻の体の表情が同じように柔らかく感じます。また、尊顔には西方からの影響を感じます。本来同じものを表現したはずの仏像は、インド・中国・日本と伝わるにつれてお顔と姿勢が変わっていきました。

 さて、日本に始まり、中国、インド、古代オリエントへと、数十年をかけて氏の蒐集の対象はシルクロードを遡っていきました。個々の作品だけでなく、その大きな流れも何かを表現しているのかもしれません。ここは、一度だけ訪問する美術館ではありません。生活の中の一部として何度も訪れて、自らの「鑑賞眼」を磨いていける場所ではないかと思います。静かな住宅地の一角にあるのも必然と感じました。
 
(2011/2/5 鑑賞、2011/7/2 執筆)
 
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