発表!遺跡オールジャパン  企画展「発掘された日本列島2011」江戸東京博物館(東京・墨田区)

Edo01  ”石の花”のように見えるのは、鹿児島県南九州市の宮ノ上遺跡で発掘された岩屑を丹念に集めて原形を復元した接合資料です。破片が見つからずに隙間になっている部分が、石器として最終製品として使われた部分だそうです。旧石器時代には、石器に作りに使える貴重な石一個からほんのわずかしか石器を取り出せなかったわけです。 

 時代を経るにつれて、だんだん効率もよくなっていくわけですが、かなりの目的意識を持って観察しないと、ゼロからそういう気付きはえられません。今回は、それぞれの資料の持つ意味やつながりを文化庁の職員の方の解説を聞きながら30分くらいかけて一回り見学することができました。土日だけ1日2回のプログラムに運よく参加することができました。
 
  

Edo03  この「発掘された日本列島」という企画展は毎年、その年1年の全国の発掘の成果の中から選りすぐった物を展示する企画のようです。今年は21カ所の遺跡から選抜された約500点の資料が揃い、東京・新潟・静岡・福岡・高知と全国5カ所で展覧会が行われます。2011年の新人から選抜された日本代表です。なんだか、サッカー日本代表のようでもあります。

  

 公立の歴史系・総合博物館に行けば、石器に始まり、縄文・弥生土器、古墳、・・・と時代順に地元密着の資料が並んでいますが、流れがつかみづらいと感じます。特定の土地で着目してはいても人は動きますから石器を作った古代人・・戦国大名・・現代人、に直接的なつながりがあるとは限りません。結果としてなかなか感情移入しづらい展示になってしまいます。しかも、観覧者はまばらで、手がかりは個別の資料の簡単な説明だけという場合が多いので、基本もわからない初心者にはこの潤沢な資料空間へのアクセスのとっかかりが見つけづらいものです。

  

 今回は、日本各地の資料を使っていることと、文化庁で実際に発掘も担当されている方から「この福島県桜町遺跡で発掘された土器は、形は弥生式ですが縄文式的な模様が表面にあるので、新潟方面の影響を受けていることがわかります。」といった解説を聞きながら見学できたことで、資料の何を見ればどういうつながりがわかるのかイメージがわきました。個々の資料というノードをつなぐエッジが構成されて歴史全体のネットワークが徐々に明らかにされていくという壮大な研究の歴史がせまってくるようでした。こういうとっかかりを得れば地域ごとの展示を見たら自分でもエッジの1、2本は読み取れるのかもしれない、という気にさせられました。

  
 
 日本には46万カ所の遺跡があり、毎年各地で発掘が続けられているそうです。日本中いたるところに何層もの歴史が積み重なっているわけです。縁あって人の目に触れたひとかけらから何度もそれまでの定説が覆えされて歴史の精度が上がっていくのですね。

 サッカー日本代表が世代を重ねるにつれてプレーの質が進化していくのと比較してしまいました。
 
(2011/6/19 見学、2011/6/21 執筆)

企画展「発掘された日本列島2011」
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