展示順の常識に潜むミュージアムの本質 『ジョルジョ・デ・キリコ -変遷と回帰-』展(パナソニック汐留ミュージアム)

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キリコといえば、”不自然な遠近感”が代名詞。ところが正直なところ、不自然にも不安にも感じないぞ、私はどこか感覚がおかしいのかも、と考えていて、内覧会参加の義務を果たすべき記事の筆が進まなかったのですが、日本科学未来館で開催中の『チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地』のパネルにあった遠近法の説明を読んで少し安心しました。

遠近や立体を表す表現は、3次元を2次元に縮退させるということになります。物語もともなって時間も加わるなら、4次元が2次元にということでもあるでしょう。

チームラボの動画作品は3次元表現なので縮退の度合いも違うことになります。

キリコの”不自然な遠近法”は、当時の西洋的常識との差異を示すものでしょう。”形而上絵画”にしても、しかりです。

さて、会場は、「形而上絵画」の創作、第一次世界大戦後の古典主義絵画への変遷、晩年の形而上絵画への回帰という実時間順にキリコを追っていきます。

その順番は一人の人生を理解しやすくするための常識でしょうか。最近見学した回顧展はどれも実時間順になっていましたが、例えば映画や演劇では時間の差し替えによって生まれてくるものがあります。

一方、演じられるままに鑑賞する映画や演劇と違い、ミュージアムには、時間の長さも順番も制約がありません。観客が自ら順番を組み立てなおせるからこそ、オーソドックスなフォーマットを提示する展示が主流なのだ、というのが仮説です。

ブロガー内覧会を終えてミュージアムを出て振り返ると、その風景はキリコの代名詞にもなっている『街の神秘と憂鬱』を思い起こさせる”不思議な遠近感”に仕上がっていました。不安は掻き立てられませんでしたが、解釈に少々時間のかかる妄想を引き出してくれました。

ジョルジョ・デ・キリコ -変遷と回帰-

http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/141025/